「へー、やっぱり、釣り好きなんだね」
今まで数度来ている手塚の家。
しかし部屋に入るのはこれが初めてだった。
何故かいつも、リビングで家族と一緒にいる。
どうやら両親と祖父も、リョーマの事を気に入ってしまっていて、なかなか2人きりにさせてくれない。
部屋の壁に掛けられているのは、数多いルアー。
そして、ガラス張りになっているロッカーには数本の釣竿。
じろじろとそれらを見ていると、ガラス越しに手塚の姿が見えた。
「くにみつ?」
名前を呼んだその瞬間、リョーマの身体は手塚に抱きかかえられた。
そしてそのまま、部屋のベッドに下ろす。
「な…なに?」
いきなりの行動には、驚く事しか出来ない。
リョーマの身体の両側に腕を置き、逃げないようにする。
上から見下ろしている手塚の顔は、かなり切羽詰ったものだった。
「どう…したの?」
「…不二に宣戦布告をされた」
手塚は今日の出来事を、リョーマに話した。
黙ってそれを聞いているリョーマは、無表情で手塚の顔を見ている。
「だが、俺はお前を離したりしない」
そして、自分の想いの深さを打ち明ける。
「…そんなに、思い詰めてたの?」
「あぁ、そうだ」
きっぱりと言い放つ。
リョーマは、あっさりと肯定されて更に驚いた。
恋人と呼ばれる関係にはなったのはいいが、未だにキス止まりだった。
今はそれでもいいが、この先はどうだろうか?
その間にもリョーマの身に何かあったら…。
不二の存在が手塚を苛立たせていた。
「俺は、意外と独占欲が強いらしい」
「…不二先輩にやきもち?」
「あぁ…いや、不二だけでない。お前に繋がる全ての物に嫉妬しているんだ」
そこまでの想いを、手塚はリョーマに抱いているのだ。
「意外と嫉妬深いんだ、国光って」
「そうだな、自分でも信じられないくらいだ」
そして顔を見合わせたまま二人は、くすくすと笑い、きつく抱き締めあった。
「おばさん、おじさん。お休みなさい」
「お休み、越前君」
「ゆっくり休んでね、越前君」
リョーマは風呂から出た後、リビングにいる手塚の両親に挨拶をした。
そして、宛がわれた和室に入った。
広い家の中には数室の客室が設けられていた。
そのうちの一つを用意されたが、こんな経験は初めてだった。
「…何か寂しいね」
電気を消し、ふんわりとした布団に入ったリョーマは、天井の木目をしばらく眺めた後、ごろりと横を向き布団を頭までかぶった。
静かな部屋の中では、時計の音だけが響いている。
こういう時は神経が敏感になるのか、良く聞こえるのだ。
目を瞑っていると、かなり小さいが廊下を歩いている音がして、少し身を縮める。
そしてこの部屋の前で止まると、次にすーっと襖を開く音がした。
「…リョーマ?」
「国光?」
声が手塚だと気付くと、ばさっと布団を剥いで起き上がり、開いた襖にいる手塚を見た。
パジャマ姿で現れた手塚は、メガネを外していた。
初めてみた素顔に、リョーマは頬を赤らめるが、暗い室内でその色はわからなかった。
「どうしたの?」
遠くからリビングで声がしていた。
手塚は開けた襖をそっと閉めると、リョーマに近寄る。
「お前が一つ屋根の下にいるのに、勿体無くてな」
そして、その頬に手を寄せ、そのままなぞる。
リョーマは擽ったそうにしながらも、決してその手を払う事はしない。
「…リョーマ」
名前を呼びながら、手塚の秀麗な顔が近付いてきた。
“あぁ、キスされるんだ”と思い、そっと瞼を閉じた。
温かな感触が、ふわりと自分の唇に降りてきた。
軽く触れ合う口付けは、次第に激しさを増していった。
お互いの唾液が交じり合うほどに舌を絡め、その口付けに酔いしれていた。
「…ん…は……」
息をする度に、リョーマの口からは甘く誘う声が零れる。
長い口付けを漸く終え、手塚はリョーマの顔を覗き込む。
キスの余韻でその目尻は赤く染まり、瞳はうっすらと潤んでいた。
唇はどちらのものかわからない唾液に濡れて、妖しく光っている。
それを見た手塚は、身体の中で何かがドクンと弾けるのを感じた。
気が付けば布団にリョーマを押し倒していた。
「あっ…」
「リョーマ…いいか?」
何がいいのか、それを聞くのは野暮だ。
手塚の求めている事はわかっている。
自分も少なからず、期待していた事は確かなのだ。
「…うん、いいよ…」
蚊の泣くような声で、手塚に返答をする。
リョーマの承諾を得ると、手塚はその身体に覆い被さった。
口付けは更に周到だった。
しっかり唇を堪能すると、唇から柔らかい耳朶に替え、輪郭をなぞるように舐め、そっと歯を立てたり、窪みの中までも味わうようにして、リョーマが感じる場所を探した。
耐えたような声が零れると、そこを重点的に攻めた。
「…ッ…何?」
チクリとした痛みが首筋に感じられ、咄嗟に閉じていた瞼を開く。
見れば、首筋に手塚の顔が埋められていた。
「ん?悪い、跡が付いた…」
首筋から顔を逸らし、唇へ一つキスを落とした。
謝ってはいるが、悪びれた表情では無かった。
「跡って……やっ…そこ…」
手塚は顔を首筋に戻し、パジャマのボタンを外していた。
そして現れたリョーマの胸の突起に手の平を這わせる。
触れるうちにその部分は堅くしこり、その存在を手塚に与えていた。
「…あぁ……や…ぁ…」
指で戯れていた場所に、次は唇を寄せる。
唇で軽く挟み、舌で転がすように愛撫すると、リョーマの口からはひっきりなしに声が零れる。
そのうちにその声が聞こえなくなり、変に思い手塚が顔を上げると、リョーマは自分の指を噛みながら、懸命に耐えていた。
「こらっ、リョーマ…、指を噛むな」
その指を外そうと、手を伸ばす。
リョーマの口から指を外すと、しっかりと歯の跡が残っていた。
「…だって、声…聞こえちゃうよ」
リビングの音がすると言う事は、こちらの物音も聞こえるのではないかと、不安に感じている。
自分はリョーマに夢中で忘れていたが、ここは自宅の部屋の一つなのだ。
「…大丈夫だ」
安心させるように頭を撫でる。
「…でも」
「この部屋はリビングからも、両親の部屋から一番遠いし、襖を閉めれば音はそれほどしない」
それを聞いて、リョーマは耳をすませると、先程聞こえていた音は全く聞こえない。
なるほど、この襖には防音加工がされているようだ。
客人がゆっくり眠れるように、と細かく配慮されている。
流石は手塚邸。
「安心したか?」
「…うん」
リョーマの返事を聞くと、また胸元に顔を寄せて先程の続きを行う。
「…あ…んん…」
それからのリョーマは、声を抑える事はしなかった。
幼いリョーマには、羞恥心なるものはあまり無いようだ。
与えられる愛撫をその身体で素直に受け止めている。
「…えっ、そんなトコ…」
リョーマはふわふわした気持ちの中で、手塚の手や口から与えられる愛撫を受けていたが、最も敏感な部分に触れた事により驚き、身を起こした。
手塚の右手は、リョーマの幼い形態のままのモノに絡まっていた。
男同士の行為の事は、本場のアメリカにいたので、良く知っていた。
その容姿から、幾度となくその手のお誘いを受けていたのだ。
だからって興味は無い。
自分はノーマルだからと、そんな誘いは断固としてお断りしていた。
それなのに、どうしてこんなに興奮するんだろう。
自慰行為だってした事あるが、他人に触れさせるのは当たり前だが初めてだった。
それも好きな相手の手に包まれているのだ。
自分とはまるで違う動きに、翻弄されていた。
「…やぁ…あぅ…あ……」
上下に擦られたり、きゅっと握られると、その動きに合わせてリョーマの声が溢れる。
…かわいい。
手塚の頭にはその言葉しか浮かばなかった。
自分の愛撫を懸命に受け止めて、リョーマは淫らに喘ぐ。
このような経験など、手塚にあるわけが無い。
ただ、リョーマに快感を与えたかっただけで、その手や指や口が動いてしまう。
どこをどうしたらいいのか、そんな事は頭に無く、全てを愛したかった。
「…あぁ…だ…め…やぁ…あ…」
リョーマの先端からは先走りの液体が滲み出し、手塚の手を濡らし始め、卑猥な音が部屋に響く。
次に手塚はためらいもなく、リョーマ自身を口に咥える。
更に舌や指を使い、追い詰める。
リョーマはその動きから来る何かを、必死に耐えていた。
「……イキそうなのか?」
「…や……しゃべらないで……」
その口の動きにも敏感に反応するリョーマに対し、手塚は指の動きを激しくし、舌で先端部分を重点的に攻めた。
「ヤッ……あああぁ…」
耐え切れなくなったリョーマは、ビクビクと身体を痙攣させて、手塚の口腔に白濁を吐き出していた。
その動きをダイレクトに感じると、最後の一滴まで全てを飲み干し、ゆっくりと口を離した。
「え…飲んじゃった…の?」
弛緩した身体を投げ出し、リョーマは申し訳無さそうな顔で手塚を見ていた。
「どうした?」
「だって、あんなの…」
自分でも興味本位で一度だけ舐めてみた事があったが、美味いモノではない。
むしろマズイ。
青臭くて、こんなものがこの世にあるのか?と思うくらいに奇妙な味だ。
そんなもモノを飲ませた事に、かなり落ち込んでいた。
「…気にするな、美味かったぞ」
手塚は泣きそうな顔になっているリョーマを抱きかかえ、率直な感想を述べる。
「…おいしい訳無いじゃん」
今にも涙が落ちそうな目を、手塚は唇で拭う。
「お前は、全てが甘くて美味い」
その涙も、普通ならしょっぱいと感じるのが当たり前の反応なのに、手塚には最高のエキスに感じた。
そんな事を言われたリョーマは、恥ずかしさで顔を伏せてしまった。
手塚は抱きかかえていた身体を再び布団に戻す。
そして、その片足を自分の肩に掛けた。
これから自分の身体に起こる事に気が付いたのか、リョーマはギクリと身を固くした。
「大丈夫だ…」
手塚は安心させるように、まずはその太股に唇を寄せる。
男にしては柔らかい肌の感触を、満足そうに味わう。
その感触に、ゆっくりと身体の強張りを弱めた。
手塚は自分の指を濡らし、まだ開拓させていない双丘の奥の蕾をそろりとなぞれば、再びその身体に緊張が走った。
「大丈夫だ。傷付ける事などしない」
ゆっくりと、堅い蕾を解かし始める。
時間を掛けて、決して痛みを与えないように、殊更ゆっくりと。
このような事を手塚はどこで知ったのか?
リョーマは少しだけ疑問が生まれたが、押し寄せる快感がそれを消してしまっていた。
「…あ…や……」
そうしているうちに、漸く一本の指が体内に入り込んだ。
ここで焦ってはいけないと、その一本でまたもやゆっくりと中を解かしに掛かる。
次第に解れてきたのか、二本目を入れることが出来た。
「あんっ、な、何…今の?」
「ここか…」
手塚はリョーマの中である場所を探していた。
そこは男には必ずある性感帯だ。
ここを刺激されれば、どんなに枯れた年寄りでも勃起してしまう。
リョーマの幼いモノも自己主張するかのように、ゆるやかに勃ちあがってしまっていた。
手塚はそこを幾度となく擦った。
その度にリョーマは声を上げ、身体もピクピク跳ねる。
再び勃ちあがった自身からは、またも先走りの液が垂れ、蕾まで濡らしている。
それが潤滑材となり、手塚の指の動きをスムーズにさせていて、いつのまにか指は三本になっていた。
「…リョーマ、いいか?」
手塚は切羽詰った表情でリョーマを見ている。
自分は手塚によって、全ての着衣を脱がされていたが、手塚はまだ何も脱いでいないのに気付く。
「…パジャマ…」
リョーマは、その先の行為に承諾したが、パジャマの事を指摘した。
「あぁ、そうだな」
あまりにも夢中になりすぎて、自分の事などお構いなしだった。
リョーマの身体から指を抜き、少し離れると着衣を全て脱いだ。
手塚の身体はリョーマと違い、既に成人男性と同じくらいの体格だった。
綺麗に付いた筋肉をぼんやり上から順に眺めていると、途端に顔を赤らめた。
「どうした?」
「…何でもない」
リョーマはしっかり見てしまった。
天を仰ぐほど勃ちあがっていた手塚の欲望の証を。
その部分も自分とは全く違う『男』だった。
改めて、少しだけ恐怖を覚え身体を丸めた。
「…恐いのか」
手塚はリョーマの心情を感じ、その背中を優しく撫でる。
「無理強いはしない…今日は止めておくか?」
「え?だって…」
「ん?」
ちらりと下半身を見れば、この先の行為を待ちわびている手塚の大きく育っている雄が目に入る。
「…いいよ…俺も国光と一つになりたい」
ちょっとコワイけど、大丈夫だよ。
「ありがとう」
顔中に触れるだけのキスを贈った後、リョーマの両足を抱える。
そして、ゆっくりと体内に埋め始める。
「…う…ぐぅ………」
流石に慣らしたからといって、そう簡単に処女地がその行為を受け入れる事は難しい。
リョーマは苦悶に満ちた表情で、手塚の腕を掴んでいた。
可哀想だと思ったが、手塚には止める事が出来なかった。
先端を少しだけ入れた時に感じた、リョーマの温かい内部を、もっと感じたかった。
全てを収めるのに時間は掛かったが、そのお陰でリョーマの身体も少なからず受け入れる状態になっていた。
ゆっくりと動き出すと、リョーマの口からその律動に合わせて声が零れる。
腕を掴む力も弱くなり、縋りついている状態だ。
「……あっ、あぁ……」
「…気持ちいいか?」
その腕を自分の肩に置くようにすると、必死にしがみ付いてくる。
その背を抱き込み、律動を激しくする。
「…うん…いいよ…」
リョーマの答えに手塚は満足し、腕の力を強くする。
自分の性の象徴が、リョーマの中を出たり入ったりするのを見ると、一つに繋がっているのが実感できた。
「…あぁ…や…また…く……る…よ……」
手塚の律動を、その身に受けていたリョーマの身体に、良く知った排出感が襲う。
それに気付いた手塚は、更に奥まで届くようにぐいぐいと身体を進める。
片手は期待に小さく震えている、リョーマ自身に伸ばして。
「……ああぁ…い…や…」
ふるふると頭を振り、その快感に耐える。
「どうした?」
「…こん…どは…いっ……しょに…」
途切れ途切れに手塚に懇願する。
「あぁ、そうだな…」
手塚はリョーマの言いたい事を理解すると、激しく腰を打ち付ける。
「…いいか、イクぞ………」
「…や……ああああぁぁー……」
最後に強く打ち付けると、リョーマは白濁した液を、手塚の手と自分の腹にぶちまけた。
手塚も低い呻き声を上げて、最愛の人の中で最後を迎えた。
二人は互いに抱き締め合い、その余韻を味わっていた。
「はぁ、あふ…」
手塚はリョーマの中から、ゆっくりと自身を取り出す。
「ふぅ、大丈夫か?リョーマ」
「…うん、だいじょぶ……あれ?つけてたんだ」
手塚はリョーマの負担にならない様に、自分にはコンドームを装着していた。
外すのをじっと見つめるリョーマに、気恥ずかしさが沸き起こる。
「…あまり見るな」
「いいじゃん、初めてなんだもん。でも、いつのまに?」
「…自販機でも売っているからな」
紳士的な面も持ち合わせているようだが、この手塚がそんな物を買っている姿が想像できなかった。
リョーマもそれを見た事はあるが、実際に使う事などあるはずが無い。
知らずに風船のように膨らませて、見つけた母親に怒られたりした経験ならある。
「…でも、すごく出たね…溜まってたの?」
手塚は、外したゴムの口を、中身が零れないように縛っている。
そうすることによって、より良く中身がわかってしまう。
リョーマは先端部分に溜まっている液体の量をじっくり眺めた。
「だから、見るな…」
溜まっていた事は確かだ。
リョーマと付き合い出してから、夢にまで見るリョーマとのセックス。
それを自分で処理するのは、なんとも情けない事だ。
必死に抑えて、抑え付けて、今まで耐えて来たのだ。
これ以上は突っ込まれないように、部屋に置いてあったティッシュでそれを包んだ。
「もう一度風呂に入るか?」
行為で濡れた身体を、シャワーで流そうかと言って来た。
「…行きたいけど、動きたくない」
腰は痺れたようにジンジンとしているし、手塚を受け入れていた場所は、今でも何かが入っている感じがする。
無理に動かせば動くが、何だか起き上がりたくなかった。
「わかった、タオルを取ってくる」
手塚は脱ぎ捨てたパジャマを着ると、一度出て行った。
部屋に一人残されたリョーマは、手塚と一つになれた喜びで満面の笑みを浮かべている。
パジャマも着たいし、ふかふかの布団もかぶりたいが、どうにも身体が動かないのだ。
そうこうしているうちに次第に眠気が襲ってきて、そのままリョーマは目を閉じてしまった。
「濡らした方がいいな…っと、これは捨てていくか」
タオルは少し熱めのお湯で濡らした。
次にティッシュに包んだコンドームを、洗面所のゴミ箱に捨てた。
これを知られたらマズイなと、その上からこっそりゴミを置いてしまう。
「リョーマ?」
客室に戻ると、リョーマはすうすうと寝息を立てて眠っていた。
それも裸のままで、布団もかぶらずに。
「…風邪をひくぞ」
お湯で濡らしたタオルで身体を拭いても、下着やパジャマを着させても、最後に布団をかぶせても、リョーマが目覚める事はなかった。
「ゆっくりお休み、リョーマ」
耳元で囁くと、リョーマの口元は笑みを浮かべていた。
起きてはいないが、手塚の声に反応したのだろう。
最後に頬に口付けて、手塚は部屋から出て行った。
「あら、国光。どうしたの?」
部屋から出ると、彩菜とバッタリ会ってしまった。
しかし手塚は慣れたもので、表情を変える事なくその質問に答える。
「越前はかなり寝相が悪いと言っていたので、様子を見に行っていました」
それは事実だ。
リョーマが良く話してくれていた。
『朝起きると、布団がなかった』
『布団の上にいた時もあった』
冬は一体どうしているのか?と心配になる。
実は彩菜も様子を見て来ようと、こっそり部屋に向かっていたのだ。
しかし、先を越されたと少し悔しそう。
「まぁ、それなら一人にしない方が良かったわね」
あらあら、と彩菜は困った様に顔に手を宛てた。
それから何かを考えついたようで、片手をもう片方の手の平にぽんと置く。
「今は、寝ているの?」
「はい」
「それなら、国光が一緒に寝てあげたらどう?」
「はい…え?」
「それなら、お布団を用意しないと」
彩菜はパタパタと、違う部屋から布団を取りに行った。
「ほら、国光。手伝って」
「あ、はい」
結局は母親の言いなりになっている手塚だった。
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